修了生の活動
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修了生の活動

遠藤 佑子 様

助産師
兵庫県立大学 看護学部 母性看護学 助教
周産期グリーフケアはちどりプロジェクト 共同代表

修了後の活動

私は京都グリーフケア協会で得た大切な学びを活かして、専門分野である周産期領域におけるグリーフケアの拡充を目指し、2018年に仲間と共に任意団体『周産期グリーフケアはちどりプロジェクト』(以下、はちどりプロジェクト)を設立し、グリーフケア啓発活動に奮闘する日々を送っています。
 はちどりプロジェクトは、流産・死産を経験した当事者と医療者が対等に協働しながら活動する小さなボランティア団体です。私たちは、今はまだ十分に普及していないと認識している、赤ちゃんとお別れをしたご家族の悲しみへの理解と支援の必要性を伝えるために、地道に心を込めて啓発活動に取組んでいます。私自身が助産師として臨床現場で、流産・死産を経験した母親がこれほど悲しいことが起こった後、退院されどのように過ごされているのか気がかりで、何かできることはなかったのだろうかと悩んだことが当協会に通うきっかけでした。その後、自助会ボランティア活動に参加する中で当事者の方々から学ぶ中、周産期に携わる医療者の多くは当事者が体験している深い悲しみの実態を知らないからこそ戸惑いながらグリーフケアに取組んでいると感じました。当事者の生の声をお聴かせいただくことで、医療者が考える支援と当事者が本当に求めている支援に大きな懸隔がある実態を知りました。当事者の方々がただでさえ深い悲しみの中にある時、この溝から生じる理解不足により医療・社会(自治体窓口、家族、友人、職場等)で二次的な傷つきを受けている実態を知り、胸が痛みました。助産師としてこの実態を知った以上、本課題に向き合っていく責任があると感じています。なぜならば、助産師はいのちを取り扱うことを業としているからです。生だけを受入れ、死から目を背けていては、本当の意味でいのちに寄り添う専門家であるとは言えません。まだまだ、グリーフケア自体への理解・必要性の普及が必要な状況だと認識していますが、臨床現場そして地域で当事者の方々への理解と温かな寄り添いが広がっていくまで、仲間とともに、当事者のみなさんの声を社会へ発信し続けたいと考えています。
 はちどりプロジェクトでは、グリーフケア研修会(医療者,心理職,自治体,政治家等)、各種お話会(専門門職・当事者)、当事者の声を届けるアンケート調査など、様々な形のグリーフケア啓発活動に取組んでいます。啓発活動は相手に自ら気づいてもらえるよう働きかける地道な活動なので、一足飛びに理解が得られる活動ではありません。思うようにいかないことの方が多く学びの日々です。10人の方に伝え1人に私たちの思いが伝われば有難いことなのだと心に留めながら活動しています。約3000人が参加する学会ブースに当事者の声を展示した際、フィードバックが1件も得られない時は、本当に悔しかったです。しかしそのような悔しい思いも、私がグリーフケア啓発活動に取組む原動力となっているように感じています。諦めそうになるほど悔しいこともたくさんありますが、諦めずに活動を続けていくことが何よりも大切で、悪い事ばかりではなく良いご縁に恵まれることにも支えられる日々です。
初心を忘れぬよういつも心に留めて、当事者の方々を常に活動の中心に置きながら、さまざまな立場にある人々の橋渡し役となって連携を促進していけるように取り組んでいきたいと考えています。そしてグリーフケアが社会の中で当たり前にある世の中になれば、はちどりプロジェクトの活動など必要なくなります。いつかはちどりプロジェクトが解散をむかえる日まで、私たちにできる目の前の小さなことこそ大切に諦めずに取り組めば、きっと未来は変わると信じて、これからも仲間と歩んでいきます。
私は、このように修了後、より一層、グリーフケアの大切さや必要性を感じています。人生は喪失の積み重ねであり、誰もがグリーフを抱えながら生きています。グリーフケアは生きている以上、誰にとっても大切で必要なことだと考えています。活動を通して大切なことを学ぶ日々に感謝し、これからも生きている限り、この大切な課題に向き合い学び続けていきたいと思います。


佐川 希望 様

看護師
水戸済生会総合病院 緩和ケア病棟

修了後の活動

緩和ケア病棟で終末期の患者さんやご家族と関わる中で、グリーフへの対応が分からず、グリーフケアへの苦手意識があったことが学習を始めるきっかけでした。研修で色々な先生方からグリーフについての講義を受けることで、多角的な視点でグリーフケアについて考え、学びを深めることができました。
研修後、ケアに当たる際に心に留めていることがあります。それは、“グリーフの感じ方は人それぞれであり、グリーフを乗り越えるためには、ご自身が気持ちの整理をつけなければならない”ということです。その中で私ができることは、グリーフを抱えている人に寄り添い、支えることだと考えます。研修前は、どんな言葉をかけるべきか悩むことが多くありました。しかし研修後には、積極的な言葉かけよりも重要なのは、相手が思いを表出でき、気持ちを再確認できる場を作ることだと気付きました。それからは、積極的に患者さんやご家族のお話を聴く機会を持つようになりました。また、話す際には“共感しているかどうか判断するのは相手である”ことを意識するようになりました。共感を表す相槌が得られるように、相手の言葉をそのまま返して確認し、より一層注意を向けて聴くようにしています。そして、状態説明時には逆接の接続詞を使わないように気を付け、ゆっくりとしたペースでお気持ちを伺い、終了時には話す時間を頂いた感謝や、何かあればいつでもお話する機会を持つことをお伝えしています。さらに、ご家族が悲嘆を正常な反応だと思えず、悲嘆の中に在ることを否定的に捉え、「しっかりしなければ」と悲しい気持ちに蓋をしていることもありました。そのような時には、思いを受け止めながら、悲嘆を感じ気持ちが追い付かない状況は当然であることをお伝えし、スタッフ間での共有、そしてチーム全体でフォローしています。
私は研修を通して、グリーフケアの必要性や自分が行うケアの意味を意識して、実践できるようになりました。グリーフケアの苦手意識は低減し、積極的に患者さんやご家族へ関われるようになり、看護の手応えを感じ、やりがいにも繋がっています。今後もグリーフという側面から患者さんを捉え、より多角的な視点でアセスメントを行い、ケアに活かしていきたいと考えています。


堤 生子 様

助産師
医療法人 葵鍾会ローズベルクリニック 助産師

修了後の活動

早くも当協会で本格的にグリーフケアについて学んでから7年が経った。現場での勤務が長くなり、いろんなことを経験してからの研修参加だったため、講師の先生方の講義が身に沁みるように吸収していった感覚であった。
その後、2016年10月より岐阜県で「グリカフェ」という流産・死産・新生児死亡を経験された方の語る場を有志のメンバーで設けた。
3か月に1回の開催で現在に至るが、1名からご夫婦、数組の参加者と小規模な場となっている。
小規模ならではのメリットでお一人が語る時間が十分に取れて、「語る」ことに満足されているご意見をいただいている。
数組になると他の方の意見を聞くことができ、自分より先に経験された方のお話は今後の自分の進む方向に参考になり、「その頃の私もそうだったよ」「子供を亡くした私たちは特別な心理状態なので精神科や心療内科にかかることは恥ずかしいことではないよ」などの助言をいただき、安心される方もいる。
また、時間が経って語ることや泣く場所が無く、通常の生活に戻っている自分を責めている方も多い。
その状況は通常の流れであることを説明すると安堵され、久しぶりに亡くした子供のことだけを考える時間になって良かったという声もいただいた。
最近では総合病院の医師から紹介された方の参加者も続き、医療機関との連携が図れてきた手ごたえを感じている。
グリカフェの参加者のお話は医療機関への苦情もあるが最近は感謝のお言葉の方が多くなり、グリーフケアが浸透してきた感触がある。
また、医療機関に還元できるお言葉もあり、職場や他の医療機関でもグリカフェで学んだことを研修でお話させていただいている。
皆様の関心は高く、どの研修でも活発な意見交換がなされている。
職場でもスタッフの意識が高く、困ったときは相談を受けるが十分な関わりができるスタッフが増えてきた。
私の今後の役割はグリーフケアについて悲しい体験をされた方のみならずケアする側の人々にも広めていくことだと感じている。
協会で学ぶ機会をいただいたことに感謝している。