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受講者の声 葬儀従事者コース
佐々木 幸一 様
一級葬祭ディレクター
葬儀の仕事について約27年が経過しようとしています。この仕事に就いた当時は葬儀費用の曖昧さがまだ横行していたように記憶しています。そのような中ではご遺族のお気持ちに配慮することが殆どありませんでした。
諸先輩方に付いて葬儀担当としての研修をすればするほど漠然としてですが「こんな仕方でいいのだろうか?」と疑いながら一通りの研修を終え、葬儀のいち担当者としてデビューしました。独りで葬儀を担当する様になってからは、抱いていた疑問を徐々に解消し、独自にご遺族に接していきました。病院へのお迎えはご遺族と葬儀社の最初の出会いの場所であると認識し直し、ご遺体には学んだ湯灌の技術を用いて真摯に、丁寧に触れさせて頂き、ご遺族のご希望には出来るだけ応えていくというものでした。上司からは「そんなやり方をしていたら身が持たない」と止められたこともありましたが、それでは自分が納得いかず、独自性は高まる一方でした。故あってその会社を退社、退社を決めたその日の新聞求人広告で今の会社に入社して19年が経過しました。
「グリーフ」という言葉を知ったのは恥ずかしながら6年前のことでした。「ご遺族の死別からくる悲嘆をいかに解消していくか」と浅はかな認識でしたが、自分がしてきたことのへの正当性があったと思えた事でした。しかし、ろくに勉強もしないで、正当性があったと認識できたことにただただ慢心しておりました。
ある時、人生の師と仰ぐ人にこちらの協会の存在を教えて頂きました。当然のことながら、慢心だけでは到底追いつかない「グリーフケア」の奥深さに衝撃を受けました。
「俺は一体何をしているんだ」
京都グリーフケア協会の葬儀従事者コース受講を会社に稟申、受講の運びとなったことを会社に感謝します。
「グリーフとは死別からくる悲嘆」であり「グリーフケアとは死別からくる悲嘆の解消」と誤認していたこと、それは「喪失に伴う様々な感情の表出、反応」であり「喪失に伴う様々な感情、反応への適応」であったことと改めて認識させて頂きました。また、ご遺族は葬儀という「場」でご自身のグリーフに向き合い(ワーク)私たちはご遺族に向き合い、ご遺族のワークに寄り添う(援助)をさせていただく援助者(サポーター)を目指していくことの尊さを知らされました。
また「悲しむ」事「向き合う」事は、グリーフケアにとってとても大切な事と知りました。
27歳で軽蔑していた父が亡くなり、葬儀が終わった晩、悪しききっかけがあり、「泣く」事に徹することが出来た事。その6年後に優しかった母が亡くなり、当初の葬儀社に就職していたためか、葬儀担当者不在の中、喪主であるにも拘らず自分主導で、泣きながら旅支度と納棺を、叔父、叔母とした事。通夜の晩ドライアイスの冷気を肌に感じながら、母と添い寝をした事。出棺のあいさつで号泣できた事。4年前両親の葬儀を知る由もなく、行方不明だった3歳年下の弟が一人暮らしの埼玉のアパートの一室で腐乱遺体で発見され、自分の車に柩を積んで埼玉に向かいながら、悲しみなんぞあるものかと思って火葬式だけを務めてきましたが、荼毘に臥され収骨をしている時、意に介さず急に涙がボロボロとこぼれ嗚咽していた事を思い出しました。
しっかりグリーフに向き合えていたことを今更ながらに確認できた経験でした。ご葬儀は悲しむ、悲しめる公的な「場」であると体験から知らされました。
ではさらに、より良き援助者となるため、ご遺族への理解と共感を持つためにしっかりとした「傾聴」を心がけ、そのためのトレーニングを怠らず、言葉のはたらきに細心の注意をはらい、非言語コミュニケーションを駆使してご遺族のお気持ちに同調いたします。しかし、そのためには自分自身を知り、自身に向き合い、自身が癒されるための心の支えを見つけ、自身のQOLを高める努力をもって、ご遺族に寄り添い、ご遺族のQOLを感じ取るように言われております。
自分自身を知り、ご遺族を支えることが出来ていくこと・・・。
人は一歩一歩、成長していく過程に幸せを感じると脳科学者が言い始めていることを最近知りました。 幸せの強度はエンドルフィンという脳内物質が出ることでより強くなるという事がわかってきたということです。この物質は誰でも出ると言います。ランナーズハイと言ってマラソンランナーにも出ています。チョコレートを食べる事でも出るそうですが、実は人に感謝する事で、それは、それは大量のエンドルフィンが出ると最近の研究でわかったことだそうです。 脳科学はここ数年、ファンクションMRIという装置で、どの部位にどういう物質が増えているのかを、経時的に見られるようになったといいます。そしてもうひとつ、感謝されることでもエンドルフィンが出てくるというのです。
ご遺族とのより良い寄り添いをさせていただく為に職場の環境を整え、今ある私たちのレベルに気づき、改善してこそグリーフを語れる資格が生まれることもおかげ様でスクールから教えられたことです。そして最終的に頂いた「人としてどうなのか・・・」「葬儀従事者の前にひとであれ」とのご指摘は、日々自身を研鑽していくためのエネルギーとなり、今私はひたすら自分を磨くため仏教哲学を選択しその受講を始めたところです。
多くの心理学者さんたちが、仏陀をたたえ、仏教を教科書に人間の心を学んでいるといいます。ユングも仏陀を「全世界にとって精神的な先駆者」と言われているそうです。
仏教でいう「自利利他」という布施の精神の心を持つと、相手を活かし、自分も活きることで幸せを感じるといいます。
「自利利他」に関しての脳内物質の研究では、祈る事によってどういう脳内変化がどう出るか、なんとファンクションMRIで調べたそうです。結果、自分と他の人を見分ける部位の活動が低下したということでした。つまり自分と他人の違いがなくなり、自分の幸せを祈ることも、人の幸せを祈ることも、自他が一体になる、自分と他人の境界がなくなるという、脳の活性変化を捉えたということです。
仏教においては昔から「自利利他」は究極的に「自分と他人はひとつ」だと説かれています。それが脳内物質的に証明されてきているということでしょうか? 今も昔も変わりないということが、医学の力で科学的に証明されてきたという事でしょうか?
「祈りには効果がある」、世界のどの民族も「祈りによる効果が出ている」と村上和雄博士の心と遺伝子研究会が言っております。
祈りに効果があるのならば、京都グリーフケア協会で学んだ事を葬儀の現場で徹底して活かし、ご遺族への理解と共感の上に、亡くなられた方のご冥福を そして、ご遺族のQOLが高められることを心から祈れる、祈る、援助者でありたいと願います。
そう思えるようになった自分自身に、(一社)京都グリーフケア協会を教えて頂いた師に、受講をさせて頂いた会社に、受講のため会社を留守する間、現業を支えてくれた会社の仲間に、勿論、講師の先生方に、また協会の皆々様に心からの感謝を捧げまして「声」の結びとさせていただきます。
皆様、本当にありがとうございました。
合掌