受講者の声 介護・福祉従事者コース
介護支援専門員・介護福祉士
小林 慶三 様
私にも苦い喪失体験がある。医師より父(62歳)が末期癌であると知らされた時である。
痛みと嘔吐をこらえる本人に告知できず、術後病状は治まるどころか悪化し、本人より「俺は癌か?もう助からないのか?」と不安な表情で訊かれ、「手術で切除したので徐々に良くなるよ。」と答えるのが精一杯。抗がん剤の副作用に苦しむ父を見たり、父の問いかけに応じるのも辛く、病院へ向かう足取りは重く、病室へ入るのが怖かった。
「なぜ父が死ななければならないのか?」、「なぜ苦しみながら逝かなければないのか?」「父の人生は有意義だったのか?」「まだまだやりたいことがあったのではないか?」など
考えたが解らず、過去を悔やみ、先(死)の不安でいっぱいで父の話を十分に聴くこともなく限られた時間を父と有意義に過ごせなかった。死=終わり=全てが無。「自分もいつかは父のように不安や孤独を抱きながら死ぬのだ。」と死への恐怖を始めて実感させられた。
父の死後、介護の仕事に携わり様々な喪失を体験したが、死により故人との関係が終結する現実に死へのネガティブな感情は拭えず、虚しさと援助者としての無力感を抱いた。
ホームホスピスへ勤務することになり、管理者の方から京都グリーフケア協会を紹介頂き、初級・中級・上級を受講した。看取り前後の本人とそのご家族に寄り添う際、喪失の事実を変えることはできないが、本人・家族の語りにひたすら耳を傾けることで、本人・家族自らが喪失の意味づけを変え悲しみや苦痛を乗り越え、喪失後の故人のいなくなった世界でもう一度人生を作り上げることができる。父が亡くなり早十八年、昨年病院で長い療養生活の後、母が亡くなった。受講した今大切な人の死(喪失体験)に対して自分にとって有意義な意味づけを与えることが少しはできるようになった。京都グリーフケアは先生方のお話を少人数で受講し、質問もし易く、先生の体験談を聴いたり、他の受講生の抱える問題も一緒に考えることで多くの気づきを得ることができた。力愛不二。愛の伴わない力は暴力であり、力の伴わない愛は無力である。人を救いたいと思っても知識や技術がなければ救えない。癌はからだもこころも苦しめる。全人的苦痛に対する全人的なケアなど今回の学びをきっかけに利用者様のQOLを高めるべく、今後も学び、実践していきたい。